どろらい?

小説とか絵とかを創ってる同人サークル『DrawingWriting』の小説担当が、目についた映画とか小説とか漫画とかアニメとかその他諸々な文化的生活に重要な娯楽について語る無駄グチブログです。

【GAMERA -Rebirth-】 平成ガメラ三部作への鎮魂歌

ウミガメとしての愛らしさとリクガメとしての雄々しさが合わさり最強に見える。

 

子供の頃は感じていた 目に見えないその亀を

平成ガメラ三部作が好きだ。好き『だった』ではない。現在進行形で好き『だ』。

 

空中大決戦・レギオン襲来・イリス覚醒。ググらずとも各サブタイトルはサラっと頭に浮かんでくる。半壊した東京タワーで夕焼けに染まるギャオス、ブチギレてガメラをすら圧倒するレギオン、月光に照らされるイリス。何もかもが美しい。

 

正直、各映画を何回観たかは分からない。ブルーレイを持っているから当然個人で一周以上しているだろうし、友人数名にも勧めて共に観た記憶がある。まぁ、だからそれなりに観ているのだろう。

 

自分でもどうかな、と思わなくはない。

 

だけど、前述したような美しいカットの数々には何度観ても心を動かされるし、理知的に激しく戦うガメラの雄姿は何度観ても熱いものがこみ上げてくる。これはもうそういう風に僕の魂に刷り込まれてしまったものなのだ。だからどうしようもない。

 

だからこの令和の世に新作として発表された新作ガメラ――即ち【ガメラ・リバース】も当然視聴しなければと思っていた。

 

そして本日。つまりこの記事をUPした日。全六話、しっかり観終わった。

 

 

 

率直な感想を言おう。

 

 

 

 

 

……ちょっと微妙だったかも知れん。

 

 

みんな確かに信じていた 大きな亀の力がある

何が微妙だったのか? 僕は観終わってから考えた。数時間ほどガメラのことを考え続けた。あの強く優しい巨大な亀の物語の何が不満なのか。自分なりに考えた。

 

結果、僕は一つの結論に辿り着いた。

 

 

 

ガメラが強すぎる。

 

というより、敵怪獣との戦いが呆気なさすぎる。

 

 

 

 

 

敵怪獣に魅力が無いわけではない。お馴染みのえげつない超音波メスを繰り出すギャオス、ガメラの右腕を切り落とすという偉業を為したギロン、重力を操るバイラス。大元の造型は昭和ガメラを参考にしたらしいけれど、それぞれの戦法は特徴的だし、人類への脅威度もよく描かれていた。個人的にはガメラと水中戦を繰り広げたジグラが一番好みだろうか。公式サイトのシルエットではカブトガニにしか見えない辺りも、良い感じに正体を隠されているようで暗殺者感がある。陸に上がった途端に何か気持ち悪くなってしまったのも哀愁を漂わせる。

 

と、感想を二百五十文字くらいスラスラ書けるくらい、それぞれの怪獣にはそれぞれの良さがあるのだが、如何せん彼らの活躍は大体本気を出したガメラのワンパンで終わってしまう。ワンパンというと語弊があるけれど、ガメラが一旦攻撃に出るとアッサリみんなやられてしまう。

 

 

 

ガメラ・リバース】の戦闘はどれも三工程に分けられると思う。

 

最初の工程では、主人公の危機に颯爽と駆けつけたガメラが開戦の火ぶたを切る。

 

二つ目の工程では、敵怪獣がハッスルし、ガメラを一方的に痛めつける。

 

最後の工程では、第二工程で得た敵怪獣の情報を基に、ガメラが新技を披露するなりなんなりして敵を倒す。

 

この最後の工程が大体一分間くらいで終わる。まぁ厳密に数えたワケではないので、しっかりカウントすると「いや……敵さん頑張ってはりますやん」とかの印象になるかも知れないのだけど、体感ではそんな感じだったということだ。

 

それが何というか、とても味気ないように感じてしまった。

 

 

亀を好きになって 今、思い出したことは

それから更に数時間後、僕は風呂に入っていた。風呂に入りながら考えた。では、僕にとっての理想のガメラとは何か? 【ガメラ・リバース】がどうであれば僕は満足だったのか? 自分なりに考えた。

 

結果、僕は一つの結論に辿り着いた。

 

僕は老害化している。

 

 

 

分かってしまえば当然のことだった。僕の心には余りにも根深く平成ガメラ三部作が棲みついてしまっている。もはやそれは分かたれ難く僕の血となり肉となり骨となり心となった。

 

理想のガメラとは何か? 【ガメラ・リバース】がどうであれば満足だったか? 決まっている。僕にとってのそれは『平成ガメラ三部作のようなもの』以外あり得ない。シザーマンは時を固着させて不死身の化け物となったが、僕の心にもそういう類のものが棲みついてしまっていたのだ。そら新作を観ても「なんか違うな」と思うはずだ。

 

 

 

ガメラ・リバース】は平成ガメラ三部作とは時代も世界観も異なる物語である。その根幹にあるのは少年たちが一夏の間に体験する冒険、そして成長だ。

 

「いつか夏休みは終わる」

 

この夏で少年たちは多くの出会いと別れを体験した。そして喪失の果てに力強く羽ばたいた。平成ガメラ三部作とはそもそもテーマやコンセプトが違う。それを頭に置きながら改めて【ガメラ・リバース】を思い起こすと……焦点が当たっているのが少年たちであることも、ガメラの戦闘が凝りすぎてないことも当然だと思う。

 

っていうか最終話の超大玉螺旋丸や超々距離精密狙撃を見て「ガメラの戦闘がアッサリ」というのも正直どうだろう? 決め手としてはこれ以上ない程に派手なのでは?

 

 

 

あの深い亀の中で 僕たちは

以上が、僕の中の【ガメラ・リバース】に対する想いだ。SF的世界観、成長していく少年たち、それを後押ししてくれるガメラという存在、個性豊かな敵怪獣、薄汚い大人たちの思惑、CV早見沙織のエミコ――見どころは沢山ある。それを平成ガメラ三部作が云云かんぬんで「なんか違うんだよな~」というのは、それこそなんか違う。

 

僕はよく映画を観ながらウォーキングマシンを使っているのだが、【ガメラ・リバース】を見ている間、少なくとも僕は歩いていることを忘れるくらいには画面を見つめ続けていた。それだけ夢中になれた物語だったのだと思う。

 

 

 

アブラゼミの鳴き声は、やがてツクツクボウシのそれに代わっていくものだ。

 

そういうことを改めて想起させてくれる作品だった。

 

 

 

 

以上、

 

【GAMERA -Rebirth-】 平成ガメラ三部作への鎮魂歌

 

の項を終わろうと思う。ここまで読んでいただき有難うございました。