どろらい?

小説とか絵とかを創ってる同人サークル『DrawingWriting』の小説担当が、目についた映画とか小説とか漫画とかアニメとかその他諸々な文化的生活に重要な娯楽について語る無駄グチブログです。

【蒼天航路】 麻雀で点数計算が出来ることと三国志談義が出来ることが大人の条件だと思っていた

多分そんなことは無い。

 

図書館で横山光輝先生の漫画が読めるヤツは勝ち組

 

蒼天航路、全36巻を読了した。

 

元々はネット上で度々飛び交う三国志用語を理解したいというしょうもない気持ちで横山光輝三国志を読もうとしていたのだが、残念ながら横山光輝三国志Kindleでは取り扱っていない。

 

「読みたいなー」と思い始めてから数か月ほど待ったのだが、取り扱いが始まる様子は全くない。ええいもういいや。なんか三国志を学ぶ切っ掛け、入門になるようなものはないだろうか。

 

パリピ孔明も全巻買って読んでみたが、残念ながらパリピ孔明で学べるのは諸葛亮孔明の作戦のみだった。っていうかそこまでパリピしてない。

 

そんな時に出会ったのが蒼天航路だった。

 

とりあえず3巻くらいまで買ってみた。

 

2巻くらいまで読み進めた辺りで、気づけば僕は残り33巻分を一気に購入していた。

 

それだけの強大なパワーが、蒼天航路には詰め込まれていたのだ。

 

思っていたより『三国』が出揃うのは遅かった

 

蒼天航路において、一般兵とネームド武将との間には人間としての強度に大きな差がある。本当に同じ人類なのかと疑う程だ。

 

許褚は紙屑のように人間を引きちぎるし、呂布が駆けると敵陣営は嘘のように掻っ捌かれていく。

 

横山光輝三国志のラインスタンプで何となく使っていた「甘寧一番乗り!」の元ネタである甘寧は両手を振り回すだけで呉の兵士たちを斬り殺していくし、典韋リックドムをサクサク倒すアムロ・レイみたいな動きをするし、終盤の関羽に至っては眉間に矢を受けても死なない。

 

そういう人間離れした方々が畳みかけるように現れ、活躍し、退場していく。

 

名前を知らなかった武将・文官でも退場するときには切ない気持ちで一杯になったり、逆に名前を知ってる人だと現れるだけでテンションが上がる。そしてそのキャラの濃さに眩暈を覚える。

 

個人的には夏候惇が一番好きだ。実力があり、親友ともいえる曹操を信じ、どんな苦境にあっても腐らない。何より、どんな時も思考を捨てない。無茶苦茶な命令があっても自分の頭で考え、その意味を理解しようとする。劉備を『天下人』と認めるシーンは最高にクールだった。

 

逆に劉備孔明は苦手だ。特に孔明には現代に転生して欲しくない。初対面の人間に股間を見せつけるようなヤツには英子殿のマネージャーを務めていただきたくない。

 

そして主人公・曹操横山光輝三国志では(実は中学生の時に10巻くらいまでは読んだことがある)「何か嫌な奴」という印象しかなくて、何故彼が三国志系のゲームで知力も武力も魅力もあるというチート人間という設定にされているのか全然分からなかった。が、蒼天航路での描かれ方を見ると「さもありなん」という感じだ。少なくとも様々な実績を残した傑物なのだろうと思う。

 

蒼天航路にて描かれる曹操という人物は、喧嘩が強いし一人の武将として軍を率いる力もあるし内政も出来るし人を見る目もある。信念があり、自信があり、型を破る発想力がある。おまけにレスバも強い。

 

これだけモリモリなら割と鼻につきそうなものだが、それだけの傑物だと思わせるエピソードが盛り沢山なため、何だか納得させられてしまうのだ。

 

例えば、僕が全巻購入を決意した単行本2巻のエピソード。

 

洛陽・北城門の警備隊長になった曹操は、治安回復のため「どんな理由があっても夜間は城門通行禁止。破ったら棒打ち!」というルールを作った。

 

暫くして、夜に無理やり城門を通ろうとするお偉いさんが来る。権威を笠に着て挑発してくるお偉いさんを曹操は躊躇なく捕まえ、棒打ちの刑に処す。

 

結果、お偉いさんは死んでしまう。

 

部下は言う。

 

「どうしましょう。死んじゃいました」

 

曹操は言った。

 

「ならばよし!」

 

なにも良くない。

 

三国志は『キングダム』の200年後くらいのお話です

 

結局のところ、当初の「三国志の話を理解したい」という気持ちは、いつの間にか何処かへ消えてしまっていたのだ。

 

曹操はどこまで行ってもカッコいいし、周瑜は真摯で紳士だからカッコいいし、張飛は途中チンピラになるけどその後覚醒して武神のようになる。つまりカッコいい。

 

カッコいい男たちによるカッコいい祭り。僕はその祭りを楽しんだ。ただ結末に向かってひたすら楽しんだ。

 

 

 

蒼天航路曹操にフォーカスを当てた物語であるため、三国の戦いがどうなるか、という結末までは描かれない。

 

多分、そのうち僕はその先を知ろうとして吉川英二版三国志に手を伸ばすだろう。そこには蒼天航路には無い世界があるのだと思う。劉備孔明が滅茶苦茶かっこよく描かれているかも知れないから、もしかしたら「あっ蒼天航路と全然違うねえ」と思うかもしれない。

 

それはそれで楽しいだろうなと思う。っていうかそもそもパリピ孔明孔明蒼天航路孔明は完全に別人だ。前者はスパダリで後者は変態。そういう違いもまた面白い。

 

出逢えて良かったな、と思う。

 

面白いと思えることが広がる。そういう機会は貴重だ。

 

「気になったら手を伸ばす」――そういう姿勢を忘れてはならない。蒼天航路はそう思わせてくれる傑作だった。ありがとう、と言いたい。

 

 

 

 

以上、

 

蒼天航路】 麻雀で点数計算が出来ることと三国志談義が出来ることが大人の条件だと思っていた

 

の項を終わろうと思う。ここまで読んでいただき有難うございました。